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ひきこもり戦闘団

長篠・設楽原合戦(ウォーゲーム日本史第7号)

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 少し前、NHK「名将の采配」で長篠の戦いが取り上げられた。

 同番組では織田信長を主体にして長篠の戦いを捉えており、さすがに「鉄砲3000丁」を勝因として描いていなかったが、次の3点があげられていた。
  1)野戦の阻止
  2)篭城の阻止
  3)退却の阻止
 1)は有名な馬防柵による機動力の封殺。2)は1)とも関連するが、武田軍に攻撃させるという意味。そして3)は、この戦いを決戦にするため、退路を封じること。そこまで考えていたにしては序盤の織田軍の動きは消極的だったと思うが、それも武田軍を誘引するためと言えなくもない。個人的にはそれも含めて後知恵のような気がしてならないが。

 その点、「ウォーゲーム日本史(WGJ)」第7号『長篠・設楽原合戦』は、信長はむしろ脇役、あれは武田勝頼と徳川家康の戦いだったのだ、という視点でデザインされている。ゲーム・デザイナーはじんぼだだとし氏。これが初作品となる。

日本史と、カード・ドリブンの親和性

 マップ、ユニットはWGJスタンダードでB3判、20ミリ・カウンターが80個。それにカードが30枚つく。ルールブックは今回から独立され、4ページにまとめられている。

 ターン・シークエンスはシンプルで、両軍ともにカードを引いて手札に加え(一時的に4枚になる)、手札から1枚を出してアクションを行う。アクションには、
  1)カード記載のイベントを実行する
  2)1グループ(同一エリア内の5個以下の自軍ユニット)を2エリア移動させる
  3)織田軍の増援を呼ぶ(織田・徳川連合軍のみ)
  4)パスする
がある。両軍がアクションを終えた後、敵味方のユニットが同じエリアにいれば戦闘を解決する。

 戦闘はファイア・パワー式。ダイスを振ってユニットの戦闘力以下の目が出れば敵軍に1ヒットを与える。1ヒットにつき1ステップが失われる。攻撃側、防御側の違いはなく、まず両軍の鉄砲隊が同時に射撃し、次に両軍の騎馬足軽隊が射撃を解決する。戦闘は1ラウンドで終わるが、いずれかの軍が退却すると、居座った軍は追撃射撃を一方的に行える。両軍とも居座った時は、次のターン、戦闘を再開することになる(別のエリアへは出られない)。

 連合軍は1ステップしかないが、武田軍は2ステップを持つ。戦闘力は全般的に連合軍のほうが高く、織田軍を含めれば数でも連合軍が優位に立つ。しかし徳川軍だけなら9個(うち1個は長篠城に包囲されている奥平貞昌)しかいないので、15個を持つ武田軍は有利に戦える。

 個人的な意見だが、WGJ3号『関ヶ原戦役』もそうだったが、「エリアまたはポイント・トゥ・ポイント式のマップとカード・ドリブン」は日本史テーマのゲームにマッチしたシステムだと思う。ゲーム・システムに落とし込みにくい、よくわかっていないこと、辻褄が合わないこと、エピソード性の高い要素をイベント・カードに落とし込むのはスマートな処理だ。

 その一方、カード・ドリブンで「何となく」雰囲気を再現するだけでは手抜きではないか、との批判もよくわかる。限られた資料の中からその戦いの真の姿を探り出し、ゲーム・デザインという手法で再現すべきである。その通り。だがそれは、カード・ドリブンを使っても可能である。カード・ドリブンは表現の一つでしかないのだから。

合戦か、攻城戦か

 それでは『長篠・設楽原合戦』は、長篠合戦をどのように描いているのだろうか。

 最初に書いた通り、主役は武田勝頼と徳川家康である。主導権を持たなければならないのは武田軍である。ゲームに勝利するためには、徳川家康か織田信長を除去する、または長篠城を落城・包囲した上で、7個以上の連合軍ユニットを除去しなければならない(武田軍ユニットが1個除去されるごとにノルマは1個増える)。大まかに言って、武田軍は家康の首を狙うか(信長は登場しないこともあるし、織田軍本陣まで遠いので普通は狙えない)、長篠城を攻め落とすことが目的となる。

 二つの相反する目的がある場合、そのどちらかに力を傾けると、他方は実現困難となるばかりか、主目的があからさまとなるために対処されやすくなる原理は本作についても言える。長篠城無視、家康狙いで突撃すると連合軍は対処しやすい。縦深に守られると家康に到達する時間が足りなくなる。極端な話、長篠城を落とされなければ、ユニットを何個失おうが連合軍は負けないのだ。

 長篠城を落城させるのは楽ではないが、落城すると手札が1枚に制限されるため、長篠城に圧力がかけられると(特に落城の条件が緩いと)連合軍としても放置することはできない。少なくとも、包囲されるだけで士気が低下しないよう、家康を前進させる必要があるのだ(長篠城周辺エリアに武田軍ユニットがいて、家康が大宮川の西にいると士気が1低下する)。

 そこに、武田軍がつけ入る隙が生じる。家康が前進してきたところを狙うのである。
 しかし、長篠城攻撃に重点を置きすぎると、家康を倒すことはできない。長篠城を十分圧迫しつつ、家康本陣を狙う準備を怠ってはならないのだ。

 長篠城をダシに家康を誘き出して野戦で叩こうとする勝頼。それを承知で、しかし長篠城が簡単には落城しないことを知っていて、武田軍を待ち受ける家康。自然と、そのような状景が盤上に再現される。

……ということで、実際にプレイした感想へと続く。



by kghikkie | 2010-09-28 18:37 | ウォーゲーム日本史
時々原稿を書かせてもらっている、ひきこもりゲーマーの戦闘日誌
by kghikkie
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