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ひきこもり戦闘団

East Front Battles: Prohorovka(World at War第13号)

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イースト・フロント・バトルズ・シリーズ

 共通システムで東部戦線の各戦場を再現する、イースト・フロント・バトルズ(EFB)シリーズのリリースが始まった。第1弾は、実はこれまで言われていたような派手な戦車戦はなかったとされるプロホロフカの戦いに焦点を当てた『ガーズ・タンク(GT)』。「World at War」誌第13号に掲載された。

 ユニット規模は中隊~大隊で1ターン=1日、1ヘクス=1マイルなので、ZOCあり、一部のユニットと砲兵を除けば射程を持たない。となると、思い出されるのがアド・テクノスが出版した『ドイツ装甲師団長(PDK)』である。PDCはEFBよりシンプルなゲームで、戦車、歩兵、対戦車砲の「三すくみ」が成立するようになっており、また弾薬を消費するが強力な「砲兵」が存在し、兵科による個性の違いが演出されていた。一部では評価が高いが、多分にそれは発売当時、「シミュレイター」誌に掲載されたバトル・レポートに依るところが大きい。兵科の個性はあってもユニットの種類(AFVの車種など)の差が小さく、戦術的な興味を求めるプレイヤーには全く向かない。想像力で補うことになる。

 EFBはどのような作品なのだろうか。

 基本システムは「コールド・ウォー・バトルズ2(CWB2)」であり、移動と戦闘を繰り返すシンプルなもの。それに砲兵、航空支援のルールが加わる。砲兵が重視されているのはPDKと同じで興味深い。

 CWB2との大きな違いは2点。一つは、戦闘フェイズ後に第二次戦闘を行えることと、戦闘フェイズ直前に、防御側による砲撃が行える点である。CWB2でも防御射撃はあったが、それは防御力に砲兵の最終防御射撃値を加算するものだった。EFBでは砲兵単独で攻撃側に砲撃を浴びせる(CWB2と同じ用語である、最終防御射撃値──Final Protection Fireを用いる)。第二次移動はないが、防御側を退却させると同じ距離だけ前進できるので、第二次戦闘を活用すれば大突破も可能になる。

 コマンド・コントロールのルールもあり、軍団/師団/連隊・旅団・戦闘団ごとに司令部があり、司令部の指揮範囲内にいなければ諸兵科連合のコラムシフトを受けられない、砲兵支援ができないといった一定のペナルティを受ける。ただしスタックに指揮系統の制限はない。

 戦闘は戦闘力差で解決され、また一つのヘクスを攻撃できるユニット数に制限がないため、比較的容易に最高戦力差までもっていける。そこで大事なのがコラム・シフトである。地形、諸兵科連合効果や対装甲効果で容赦なくシフトするので、ドイツ軍が戦車を先頭に大兵力で要塞を攻めたとしても、そこに対戦車砲がいれば5シフトしてたちまち接戦となる。そして戦車を投入しなければ、そもそも戦力差がつかないようになっているのだ。そうなるとドイツ軍側も、前述の諸兵科連合効果や工兵効果を生かしてコラム・シフトで対抗するしかない。

 PDKがシンプルな「三すくみ」でプレイヤーに用兵を求めたのに対し、EFBは「コラム・シフト」を考えさせるようになっている。もっとも表現の手法が異なるだけで、大事なのは部隊の特質を理解し、効率良く組み合わせることである──ということは、ルールを読めばわかる。実際はどうなのか、対戦を通じて検証してみた(次の更新を待たれよ)。



# by kghikkie | 2010-10-08 11:59 | World at War

Invasion Pearl Harbor(World at War第14号)(3)

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▲海軍特別陸戦隊がフォード島に突入、米戦艦隊を撃破して勝利を収めた瞬間、思わずこう叫んで(ftom HOTD)対戦相手に嫌な顔をされる。

ここまでの流れ
ゲーム紹介
プレイ・レポート

積極的にお奨めはしにくいが

 最初の対戦では、二日目に日本軍が勝利条件を達成した。ユニット数では圧倒的な米軍だが、ステップがないこと、また分散配置されているため戦力を集中させにくいことがボトルネックとなった。日本軍が狙う場所は明らかなので(得点源の集中した島中央である)、最初からそのことを意識した配置を行いたい。しかし拠点防御をすると簡単に目標にとりつかれてしまうので、短い防衛線を引いての時間稼ぎもまた、有効になるだろう。

 日本軍は上陸したら目標まで一直線で進むのみ、である。どこでどう得点するのか、選択の余地がないわけではないが、米軍の防衛態勢と残された時間から、最善手を見つけ出さなければならない。

 6月までのノルマンディ戦が、ドイツ軍を受け持ったほうが楽しいのと同様(異論は認める)、本作でも米軍を担当したほうが楽しい。上陸側は、部隊と物資を陸に揚げ、橋頭堡を築くことが目的であり、それは戦術的な話だ。作戦的、戦略的には、強襲上陸を実行でした時点で「成功」したようなものだから、上陸海岸だけを切り取れば、作戦的、戦略的判断が介在する余地がなくなる。

 一方、守る側のドイツ軍なら米軍は、内陸で侵攻軍を撃破するのか、それとも水際で防ぐのか、選択肢が与えられる。内線の利を生かして、どこをどの程度の戦力で守るのか、自分で判断ができる(侵攻軍は橋頭堡が確立するまでできない)。プレイヤーの作戦的、戦略的思考を試せるのだ。本作でも米軍のほうが、シークエンス、移動力の不確実性もあって、悩みどころが多い。

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▲今回の対戦で一時、米軍が採用したばらまき戦術。しかし日本軍に各個撃破され、失敗に終わった。

 テーマ的に微妙であったり、ダイスを振る回数が多すぎる気がするが、「島嶼に対する上陸作戦演習」の気持ちでプレイするとそれなりに楽しめるだろう。特に米軍。数は多いが当てにならない軍隊をどう運用して、少数精鋭の日本軍を食い止めるのか? きちんと考えないと勝てないようになっている。ソロプレイの時は、米軍の立場でオアフ島の防衛計画を練ると良いだろう。




関連リンク
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 以上、ノンアフィ(念のため)。



# by kghikkie | 2010-10-06 13:19 | World at War

Invasion Pearl Harbor(World at War第14号)(2)

オアフ島強襲作戦

 ……昭和16年12月8日(現地時間7日)未明、わが中隊はハワイ諸島オアフ島に上陸する。目標は軍事施設を残らず破壊すること。太平洋艦隊を覆滅するだけではなく、太平洋最大の根拠地をできるだけ長期間、機能停止させるのである。緊張で胃がどうにかなりそうだったが、上陸直前に皆で立ってうどんをすすり込む*。
* 本誌にそういう写真が掲載されている。

 米軍のセットアップ前に日本軍は上陸海岸を決めなければならない。第25師団は海岸近くに初期配置できるので、日本軍の上陸地点を読んで、序盤に封じ込めを狙うという作戦を取れなくもない。しかし日本軍が裏をかいて北海岸から上陸してくると、山越えに時間がかかるため、少なくとも初日は遊兵化するリスクを伴う。何度か対戦を重ねることで、このあたりの駆け引きは面白くなるものと思われる。

 日本軍を受け持った筆者は、修正が最も有利なカネオヘ湾を上陸海岸に選ぶ。すぐには橋頭保に敵が来られないことを確認した上で、部隊を前進させる。戦闘比が低くても、万歳突撃を併用しての第二次戦闘を敢行、米軍の戦力を分断すると同時に突破口を開く。

Invasion Pearl Harbor(World at War第14号)(2)_e0203305_824431.jpg
▲海軍陸戦隊、上陸直後の様子。米第25師団の背後を回り込むように、ホノルル市を目指す。

 一方、米軍は奇襲攻撃による混乱のせいか、防衛戦略がいま一つ定まらない(初対戦なので仕方がないが)。できるだけスタックして拠点防御してみたり、それでは前進を止められないのでと、ユニットをばらして二重三重の戦線を張ってみたり。しかしあまり戦線を薄くすると、各個撃破の憂き目に遭う。ZOCがないゲームのため、戦線を張るとしたらユニットを敷き詰めるしかない。それで間に合わないなら拠点防御するしかない。

 あるいは、反撃するか。

 米軍は守っているだけでは勝てないのだ。が、いつどのタイミングで攻撃できるかわからず、しかもフォーメイションごとの攻撃となるので総攻撃は行えない。何とも難しい。

 局地的な反撃は行われたが、日本軍の勢いを止めるものではなかった。7日(日本時間8日)夜、日本軍は夜襲を行い米軍の抵抗を排除、8日午前中にはホノルル全市を制圧し、移民一世は手作りの日の丸で入城を歓迎した(「一世の蜂起」というルールがある。蜂起が起こると米軍は都市の地形効果を受けられず、移動コストも1から2に増える)。

Invasion Pearl Harbor(World at War第14号)(2)_e0203305_825476.jpg
▲不眠不休で攻撃を続ける日本軍! 9日(現地時間8日)夜明けの戦況。

 戦場は山岳地帯からホノルルへ、そして真珠湾へと移る。日本軍は順調にVPを稼ぎ、あとはフォード島周辺の要塞群を破壊すれば勝利である。

 海軍陸戦隊がフォード島の対岸に集結、攻撃準備をしているところで、戦艦隊からの砲撃力を受ける! 1個中隊がたちまち壊滅した(隣接ヘクスはダイス2個、2ヘクス先はダイス1個を振って戦闘力を決め、地上戦同様に解決する)。

 いったい、空母機動部隊は何をしているのか?

 ハワイ沖ではその頃、米空母部隊が南雲部隊を発見、艦載機を出撃させていた。地上戦が順調に推移していたため慢心があったのか、それとも慣れない地上支援が悪影響を与えたのか、米軍だけが日本軍を発見、「翔鶴」が撃沈、「加賀」が損傷して戦線を離脱したのだった(空母戦はゲーム中2回発生する可能性がある。ダイスを振って状況設定を行う。艦船に対する損害もVPの対象になる)。

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▲南雲機動部隊に襲いかかる米艦載機群! 翔鶴が沈没、加賀も損傷した。

 ならばと、海軍陸戦隊はフォード島の戦艦群に斬り込み攻撃をかける。戦艦隊は脱出する暇もなく、決死隊にキングストン弁を抜かれて次々沈没。日本軍に5VPを献上したのだった。

 かくしてオアフ島の軍事施設を十分に破壊した日本軍は勝利の凱歌を上げ、ワイアナエ山脈のカアラ山で万歳三唱を唱えたのである。



# by kghikkie | 2010-10-04 08:06 | World at War

Invasion Pearl Harbor(World at War第14号)

Invasion Pearl Harbor(World at War第14号)_e0203305_11103438.jpg

 筆者の記憶が正しければ、ワークス・ゼロも「ハワイ上陸作戦」をテーマにしたゲームを企画しており、もし現物が手に入れば、本作『Invasion Pearl Harbor(IPH)』とアプローチの違いを比べたいところだ。

 IPHは、日本軍が真珠湾空襲と同時に海軍陸戦隊と陸軍の1個連隊をオアフ島に上陸させたら? という仮想設定を扱う作品。機動部隊とともに長駆、太平洋を横断するには輸送船は不向きであり、陸兵は駆逐艦に分乗して上陸するという設定だ。

 対するは、第24、第25歩兵師団と海兵隊。こちらも準備不足であり、重装備を有しておらず、歩兵だけで構成されている。また精鋭日本軍と比べると明らかに練度に劣り、指揮系統にも難がある。質より量が頼りだ。

上陸作戦の不確実性

 IPHの日本軍の目的は、オアフ島の占領ではない(もとより維持することなど不可能なのだ)。重要拠点を破壊し、その機能をできるだけ長期間、奪うことにある。タイム・リミットは空母機動部隊が支援できる、また補給物資が枯渇するまでの3日間!

 その目的を遂行するため、日本軍は上陸地点を自由に選べる。

 得点源のホノルル市に近いが、第25師団が展開していると思われる東海岸。最も上陸に適した(上陸判定のペナルティが小さい)カネオヘ湾。そして市街地から最も遠いが米軍の抵抗も小さい北海岸である。選択した海岸の連続する3ヘクスが橋頭保となり、そこから海軍陸戦隊と陸軍連隊が上陸する。なお、橋頭保は破壊されると失点になるが、守っている余裕はないので、早めに見切りをつけたほうがいい。

 シークエンスは全くのランダムで、第24師団移動/戦闘、第25師団移動/戦闘、海兵隊移動/戦闘、戦艦隊戦闘の七つの手順につきチットが用意されていて、カップから無作為に引いて手順を決める。日本軍は移動フェイズと戦闘フェイズを1回ずつ行えるが、これはどのタイミングで実行しても構わない。米軍に先んじて行動することも、米軍の行動を見てから動くこともできるのだ。

 戦闘は戦闘比とコラム・シフトを用いる一般的な手法で解決される。損害はステップ・ロスで適用される。日本軍と海兵隊は2ステップを持つが、他は1ステップしかない。米軍はユニット数では勝るもののステップ数換算すると日本軍と差がなくなる。

 日本軍は1ターンに1回しか攻撃できないが、戦闘に勝利した部隊は戦闘後前進直後、隣接する敵軍ユニットに対して2回目の攻撃を行えるという特別ルールがある。また夜間ターンは日本軍のみ攻撃を行える(有利な修正がつくこともある)。自軍の損害は2倍になるが、最大3コラム・シフトする「万歳突撃」のルールもある。

 ランダム・シークエンスを採用している上に、米軍ユニットの移動力はランダムに決まる。上陸当日はダイスの目-1、2日目は修正なし、3日目は+1となる。ランダムにランダムを重ねて(ついでに言えば、戦闘結果表も振れ幅が大きい)、何が何だかという感じだが、プレイヤーの意思を介在させにくいので、ソロプレイには向いている……気がする。

 ルールは簡単で、空母戦の要素もあり(これまたダイスを振り重ねることになる)、また日本人ゲーマーとしては気になるテーマである。無理を言って対戦してもらった(プレイの詳細は明日)。



# by kghikkie | 2010-10-02 11:04 | World at War

長篠・設楽原合戦(ウォーゲーム日本史第7号)(4)

ここまでの流れ
ゲーム紹介
ファースト・プレイ
セカンド・プレイ

歴史を知る武田軍に、連合軍はいかに立ち向かうか

 2戦とも、ルールを確認しながらのプレイではあったが、90分以内で決着した。慣れれば60分で終わるだろう。どんなに長考しても120分はかからないから、プレイヤーは気兼ねなく作戦の立案・遂行に没頭できる。

 「勝ちに不思議な勝ちはあっても、負けに不思議な負けはなし」とは野村克也の名言だ。冒頭で紹介した「名将の采配」は信長視点で長篠の戦いが描かれており、勝因の分析はあっても勝頼敗因の研究までは至っていなかった(番組の趣旨からして当然ではある)。が、勝因の裏返しが敗因でもあるわけで、今回の対戦では連合軍に主導権を与えないよう心がけてプレイした。そして勝頼は勝利したのである。

 優れたウォー(ヒストリー)ゲームは、歴史に挑戦できることだが、本作はその美点を備えていると言っていいだろう。

 気になる点としては、両軍の手番が少ないこと。カード30枚、そのうち手札にならないカード2枚(イベント・カードの「雨」と長篠城の士気を決めるのに使うカード)と使われない手札6枚(デッキからカードがなくなったターンで終了するため、その時点の手札3枚は使われない)を除いて22枚。これを両軍がシェアするので、それぞれ11手番プレイすることになる。

 通常、1手番で1グループ5駒移動させられるが、カードによっては複数のグループを動かせる。また丘陵地や大河川は移動の障害になるが、それらの影響を無視できるカードもある。そうした効果を大雑把に加味して実質12手番を費やせると計算すると、
  12手番×5駒÷15個(武田軍の場合の総ユニット数)=4回
となり、全軍が均等に移動した場合、4回=8エリア動ける計算になる。これは全く妨害を受けずに、ぎりぎり家康の根拠地に到達できる距離だ。動かす駒を10個にすれば移動機会は6回に増えるが、10個ではあまりに心許ない。全軍で敵の根拠地を襲う、という作戦は現実的ではないのだ。

 そうなると、武田軍の典型的な作戦は、今回筆者が採用した、
  ●長篠城を圧迫して家康を誘引、機会を見てこれを狙う
  ●長篠城攻めは陽動で、家康の首を最初から狙う
のいずれかになるだろう。手番の数が多ければ、長篠城の士気値を推理しながら作戦方針を変更できるだろうが、11手番ではその余裕はないと考えたほうがいい。

 歴史を知る勝頼は強い。それでは家康はどう戦えばいいのだろうか。敵が歴史を知るのであれば、こちらも歴史に学ぶ必要がある(こうして作戦研究が始まるのである)。筆者なりに考えはあるが、それはまた機会を見て紹介したい。連合軍も武田軍と同じ11手番しかないので、悠長に構えてはいられない、ということに注意されたい。




関連リンク
◆ウォーゲーム日本史 第7号 『長篠・設楽原合戦』(公式サイト)
ウォーゲーム日本史 第7号『長篠・設楽原合戦』 紹介動画 (YouTube)
通販サイト(a-game)
通販サイト(amazon)
通販サイト(i-OGM)
通販サイト(クロノノーツゲーム)
 以上、ノンアフィ(念のため)。



# by kghikkie | 2010-10-01 09:32 | ウォーゲーム日本史
時々原稿を書かせてもらっている、ひきこもりゲーマーの戦闘日誌
by kghikkie
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